新人の彼女とインタビューの席で

私はある福祉系の会社で新人の指導をまかされていました。その年は4名の新人が新たに採用され、そのうち2人は女性でした。一人はまだ大学を出たばかりで、あと一人は二十代半ばの転職組でした。

私の職場では三か月に一回出す機関紙を発行しており、私はその冊子も担当しており、機関紙には新人紹介のコーナーがあって、それぞれ顔写真とプロフィールを載せることになっていました。

転職組のWという女性のインタビューをとるために私は、彼女と小部屋で二人、向かいあいました。
Wは端麗な顔立ちと、快活な態度が印象的な女性でした。私が彼女のためのコーヒーをいれようとすると、「私がします」と言って、コーヒーカップにスプーンですくったトコーヒーをいれ、ポットの湯をカップに注ぎました。
彼女はそして、私の分もいれようとしましたが、あいにくカップが一つしかなかったので、
「どうぞ」
と私にそのコーヒーをすすめました。私は遠慮しながらも、話に夢中になってしまってつい、そのコーヒーに口をつけてしまいました。
「もう一回洗っていれなおすよ」と言うと「それでいいですわ」と彼女は私が口をつけたカップを、手にとるなり、平気で飲みました。それをみた私は、Wという女性に特別な好意を抱くようになりました。

後で、親しい間柄になった彼女に、この時のことを話すと、「あなただから、ああいうことができたのよ」と答えたのでした。あの時彼女もまた私に特別な感情を抱いていたのでした。

彼女は私が既婚者だと言うことを知っていましたが、あまりそういうことは拘らずに、それからも一緒にお茶を飲んだり、また休日にドライブにいったりするうちいつしか二人は深い関係になっていました。
Wは現在、入社してすでに1年が過ぎようとしていますが、彼女と私の恋愛関係はいまも壊れることなく継続しており、これまで一度として彼女が、妻帯している私に恨みつらみを言うようなこともなく、私もまた、彼女がいつか新しい恋人を作るような時がきても、決してそれを邪魔したりすることなく、心から祝福してやる気持ちでいます。

馴れ初め「社内恋愛」の話